難解になるので科学的な理屈は省くが、重量が重いほど慣性が強く働き、加速が遅くなる。逆に軽いほど慣性が弱くなる為、加速は速くなる。
この加速は、2kg程度でもかなり違いが出る。バッグに荷物を背負ってスプリントを行なうと、加速の鈍さを実感できる。
一方で、筋力=動力が高いほど、高速に達する事が出来る。馬力の強いエンジンほど最高速度が高い。
しかしここに相関関係があり、筋力が強くなると、重量が増加しやすい。つまり傾向として、低体重だと加速は良いが最高速度は低く、高体重だと加速は鈍いが最高速度が高い。
スプリントを式にすると、
最高速度=筋量×瞬発力
である(あくまで概念を示した式である)。。筋量=動力が多く、かつその筋肉を瞬間的に収縮する瞬発力が強いと、出される力は最大となる。
一方で、加速力を式にすると、
加速力=(筋量×瞬発力)÷重量
である。筋量を増加させて、最高速度を引き上げても、重量が大幅に増えると、加速時に慣性が働き、速度の変化が鈍くなる。
陸上100m走においても、加速が優れる「飛び出し型」と、トップスピードが優れる「追い込み型」が存在するが、自転車にもこの傾向が見られる。
パンチャーと呼ばれる、速筋に優れるが体重は重くない選手は、加速力に優れる。
スプリンターと呼ばれる、速筋に優れ、筋量も多い選手は、トップスピードに優れる。
全体的に、トラック種目に代表されるスプリンター系は、競輪選手のように、がたいの良い選手が目立つ。加速の鈍さは多少あっても、激しい高速で競い合う為、その速度に着いて来れるパワーが必要である。
ロードレースにおいてもこの傾向は見られるが、ロードレースの場合、20や30人といった大量の選手がゴールに突撃して来る事が多い為、低体重の選手でも、ドラフティングによって高速を容易に維持できる事や、コースが平らとは限らない為、条件によって有利・不利が出るなど、必ずしもスプリンターが全てのスプリントポイントで主役になるとは限らない。
なお、最高速度をより実践的に捉えるのであれば、式は以下のように捉えるべきである。
最高速度=(筋量×瞬発力)÷(ペダルロス×空気抵抗ロス)
いかにバカ力を出せても、ペダリングが悪く、その力が十分に自転車に伝わっていなければ、それだけ力が浪費される。加えて、空気抵抗を低下せしめる姿勢を十分に会得していなければ、それだけ余計に力が必要となり、出る速度が低下する。特にスプリントは高速である為、空気抵抗は何乗にも爆発的に増加する。
実践的にトップスピードを捉えるのであれば、これら「ロス」の概念を加え、技術を取得する必要がある。筋肉だけで押し込めばよいという発想に至りがちなので、改めてロスを理解する。
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